"TREASURE OF FANTOMA"   EVENING EDITION
1999年3・4月 第9号■編集/ディズニー美津乃 ビッグサンダー浅野 カリエンテ伊藤


 謎の人「黒いチューリップ?
          
美津乃 あわ

 革命の嵐吹き荒れる18世紀フランス。パリの人々は飢えと寒さに耐えかね暴徒と化し、軍隊は戦いの刃を民衆に向けていた。そんな中、民衆のために立ち上がった英雄「黒いチューリップ」。その正体は誰にもわからない・・・。

 彼は何のためにそう名乗っているのか? チューリップハットでもかぶっているのだろうか。まさか、のっぽさん? と言うことはゴン太君も? 2人ともセリフがなくて楽だぞ。ナレーションの人は忙しいが。しかし、なぜ中世フランスに「できるかな」なんだろう? ちょっと違うと思う。チラシの絵を見て推測するに、ヒラヒラブラウスにハネ帽子、長いくるくるヘアー。ビジュアル系バンドのボーカルか? それとも、SMの女王系? 違うと思う。

 なら一体どんなヤツなんだろう。私がまだ百貨店のアナウンスに「ぼっちゃん、おじょうちゃん、エスカレーターに乗る時は手すりを持って・・・」等と言われていた頃、「ラ・セーヌの星」という女の子なら誰もが見たTVアニメがあった。内容設定のハチャメチャさに、幼いながらもバカにしていたものだ。ある下町のか弱い娘が弱い民衆をたすけるために剣をとり、なぜか超天才剣士ねーちゃんとなる。さらに実はマリー・アントワネットの妹。それって、ほとんどサスケと桃太郎侍の設定だ。その上、「ラ・セーヌの星」なんて変な名前で、貴族に戦いを挑む強気女の話である。確か、彼女を育てたヤサ男が「黒いチューリップ」という義賊だった。黒マントに黒マスク、ああ、あんな感じ。少女時代のインプリンティングのおかげで容姿は安易に想像できた。だが、座長に聞くと、「そんなのとは全然違うぞ」と言う。「じゃ、その正体は?」と聞くと、「わかんない」と答えていた。

 あの時代をよく調べてみると、史実にはないが、その手の義賊たるやゴマンといたらしい。「黒いチューリップ」に始まって、「黒い騎士」だの「黒いユリ」だの「黒いゴマ」だの、皆んな黒く強ーい人だったみたい。へーえ、そうなの。

 当然、ファントマの芝居だから派手なチャンチャンバラバラをする訳ね。あー、また生キズたえぬ日々が始まるワ。そういえば「戦闘鬼」の時も知らないうちにアザだの切り傷だの手足にゴマンと出来てしまってたものよ。たまには私もヒラヒラのおドレス着てシャナリシャナリと貴婦人の役でもやりたいわぁ。と、言ったら、座長が「なら両方やったらいい。じゃ、そうしよう」となってしまった。え?! 本当に出来るの? 「それは一体どんなお話になるんです!?」と聞いたら、「わかんない」と答えていた。まぁ、いいや。とにかく、うれしいやら、痛いやら、楽しみやら。みんな待っててね。





弁当なんて何でもよかろう 弁当手配係

 私の最も重要な仕事は公演本番時の弁当手配係です。
 それはとても大変で重要な仕事です。関係者全員の人数の確認、注文、支払い、そして勝手な別 注文をするわがまま劇団員達の別精算・・・。人間が「食べる」という事に対して異常な程執着する動物である事を思い知ります。そうです。彼らは飢えたケモノです。特に伊藤えん魔、浅野彰一。てめぇらに文化とか社会とかを語る資格はねぇ! 私がカレーって言ったらカレーを食え。毎日昼飯にいちいち「王将の餃子弁当」だの、「天ぷらっとのスペシャル天丼」だの、「京樽の海鮮チラシ」だの、「サブウェイのローストビーフ・サンド」だのが揃う訳なかろうが! 私がカレーって言ったらカレー食え! 食えよ、馬鹿野郎。3流役者のくせして味にこだわるんじゃねぇ。 

 そんなストレスのたまりきった私。前回の公演「トゥー・フェイシーズ」の時、いつも以上に安っぽい弁当をわざと頼んでやりました。「よーし、今日の昼はいつもよりもランクを下げた超貧弱弁当だ!  シャケ弁とノリ弁のみだ! ウケケケケケ。」

 思った通り。私はドヒンシュクをかいました。方々からの汚らしい罵声。私は「すみません。気がまわらなくって。少しでも予算を安く抑えようと考えたんです。すみません」と謝るフリをしながら、内心で「ウケケケ、ざまぁ見やがれ」と大満足でした。しかし、ある舞台スタッフさんがこう言ったのです。「またノリ弁か・・・今晩はメニューの善し悪しによっては早く帰らせていただきます。」 ゴメンナサイ。許して。やはり、座長に呼び出しをクラいました。

「スタッフさんには良い弁当にしなさい。低予算で抑えるだけでは有能とは言えないぞ」 「その通 りです・・・。」 ああ(涙) チクショー! シャケ弁の残り物を全部踏み潰してやろうかしら。

 その夜、私は満を持して吉野屋の牛丼を注文したのでした。これならどうだ? だけど、牛丼を前にした彼らは言ったのです。「なんで特盛じゃないんだ?」 私はあまりのショックに文法を無視しはじめた。「イヤ、あの、昼、のり弁で、でも、シャケはノリとは違うし、じゃノリより牛がよいか。悪いのがノリなのかシャケで。ウケケケ」

 ・・・その後も私は修羅の弁当道を歩んでいます。次の公演は全部すうどんにしてやろうっと。ウケケケケケケ。(心理治療必要)




トゥー・フェイスからの手紙 

   〜黒いチュ−リップへ    浅野彰一  

 よお、黒いチュ−リップ。あんた一体何者だい? 俺もいろんなヒーロー連中と闘ってきたが、どうもそいつらとは違うニオイがするぜ。黒いマント、黒い羽根帽子、そして黒い覆面 までしやがって。そのトレードマークのマスクのせいで心が読めねぇ。だが、どうやら中身は黒くはないらしい。俺には見えるぜ、どんなに隠そうとしても、あんたの中に流れる赤くて熱い血がな。くっくっくっ。(笑い) クックックッ。(鳥)

 なぁ、黒いチューリップ。あんた一体何企んでやがる? 今度、TOKYOに行くって話じゃねぇか。気をつけな。あそこはヤバイ街さ。俺も行ったコトがあるが、あそこはまず言葉が通 じねぇ。奴ら「jan」とか「dayo」て意味不明の言葉を連発しやがる。「yanen」「hona」なんてのは通 じねぇ。気をつけろ。そして何より風呂の湯が熱い。江戸っ子ってのはぬるい湯にはつからないと噂では聞いていたが、マジ相当熱かった。地獄風呂だ。何しろ一緒に持って入った玉 子が完全に茹であがったくらいさ。とにかく気をつけろ。俺も気をつける。ジャボン。やっぱり熱すぎるわッ!

 だが、一番気をつけなくちゃならないのは・・・リアクションだ。と言うのは奴らはかなりクールだからだ。何しろ俺の連発するスーパーギャグを静かに笑いやがるんだ。一瞬「おうぇッ! すべったのか!?」と思う程だ。しかし、慌てる事はねぇ。実は奴らは心の中で爆笑してやがるのさ。疑うな。きっとそうだ。少なくとも俺は信じてる。(涙目) だから、客席がノ−・リアクションでも慌てるな。言葉は違ってもハ−トは必ず伝わる。奴らは待ってる。あんたが現れるのを待ってるのさ。巷じゃ、もうあんたの噂でもちきりだ。かなりイカした野郎だってな。今まで会った奴の中で一番ヤバイ野郎だってな。
よお、黒いチュ−リップ、あんた今、何考えてんだ。たぶん俺も一緒の事だな。そうさ、早く暴れたくってウズウズしてるんだろ? はっはっはっ。(笑い) ハッハッハッ。(犬)




伊藤えん魔のフェイド・アウト・コラム

 東京ディズニーランドに行ってきた。生まれて初めて行ってきた。とてもおもちろかった。思えば俺ってなんて忙しかったんだろう。劇団を始めて10年。他の事には目もくれず、(女にゃ滅法目が眩んじまったけどよ。きゃっきゃっ・) ひたすら舞台創りに打ち込んできた。ディズニーランドも、99年以降立て続けにやる東京公演の打ち合わせの為に上京したついでだった。そもそも同行した美津乃と浅野が「せっかく東京に来たんだし、ディズニーランドに行きましょうよ!」としつこく要求しやがったのさ。そう言えば、俺って行楽らしい行楽って殆どしてない。海外旅行だって仕事が多いし、パーティーだって楽しんでるより司会とか構成ばかりやってるもんな。因みに、どう言う訳かうちの客は俺をパーティーに呼びたがる。「私達、ファントマを見に行った時に知り合ったのが縁で結婚するんですぅっ・ だから、えん魔さんに司会やって欲しいんです!」なんてカップルがいて、もう4組ほどの披露宴や2次会を仕切ってやった。てめぇら、俺の芝居を恋の出会いの場所にするんじゃねぇや。まぁ、皆すごい感謝感動してくれてるので、俺も悪い気はしてないけどね。

 話を戻そう。結局、滞在最終日にミッキーに会いに行く事にした。気の早い美津乃と浅野に急かされ、朝10時の開門前にディズニーランドに到着した。当初、「30分も待つのかよ」と俺はブツブツ文句を言おうとした。ところがどうだ? 開門前になると、ミッキー以下、ディズニーの人気者達が勢揃いして客達に手を振り出したのだ。なんてサービス精神だろう。「・・・・ミィィィキィィィィッッッ!!!」 途端、横で美津乃が狂ったように叫び出した。浅野も「えん魔さん! あれ、プルートっすよ! グーフィーとよく間違うが、ありゃプルートに違いねぇ! ブラブラ舌出しやがって! ありゃ、プルートでさ! プルートなんスよ!」と涙ぐんでやがる。いつもなら、「馬鹿か、こいつら?」と冷静な俺だった。だが、知らない間に俺は群集と一緒になって絶叫していたのだ。「フック船長ぉ! あんたの気持ちは俺にゃ痛いほどわかるぜ! せむし男のカジモドよぉ。あんた、なんていい奴なんだぁ! 俺にはわかるぜぇ!」 開門の瞬間、俺は4ケ月ぶりに全力疾走をした。一気にたどり着いたシンデレラ城のはるか上空で、お陽様がクスッと笑ったような気がした・・・。んでもって、カリブの海賊に乗って、ビッグサンダーマウンテンに乗って、ビバマジック見て、3Dシアター見て・・・きゃっきゃっ・・・・・




「々」(これ何て読むの?)   制作の翁

 私は子供の頃から、他人が気付くことは気にもとめず、誰も何とも思っていない事が妙に気になったりしてきた。そのひとつが、言葉の使い方である。 ニュースによると「バールのようなもの」で金庫が壊されたり、シャッターが破られたりしているらしい。バールなら知ってるが、「バールのようなもの」って何だ? カナヅチでもペンチでもない。金物屋で「バールのようなもの下さい」って言ってくる奴は恐い人だ。でもそんなもの絶対売ってない。アメリカなのに「英語」と言うのはいやだ。水をわかしたら湯になるのに「湯を沸かす」というのも30年来、抵抗し続けている言葉だ。「コーヒーでええわ」「カレーでええわ」とってもいやだな。「サービスしておきます」は有料か無料か? 問いつめたいんだよ。「雨が降らない前」に帰らなくても降らないじゃないか。「だまされたと思って・・」って絶対イヤだよ。気がおけるのに「気のおけない奴」なんているんか! 「人一倍」努力せんと二倍しろ! せわしいのにせわしないんか! とりつくシマかヒマか、くっつくんか、ひっつくんか! 「どっこいしょ」ってどういう意味や! 全然大丈夫。大丈夫ちゃうやんか! 私の脳って、子供の頃から散歩オンリー老人の様にシマ、いやヒマなのでしょうか? だから、あるんでしょうが。そうじゃない。あるんだってばさ!