これでいいのだ

 人間が最後の最後に行き着く場所。それが墓の下である。墓石と言うのは宗派によって色々あるものだが、最近は形式にとらわれず故人の好きな形がオーダーメイドできるそうである。

 例えばつい最近、筆者の友人のバイオリニストが大変世話になったと言う大先輩A氏が他界された。話によるとA氏の墓石は巨大なバイオリンの形をしており、表面 に刻まれた五線譜に故人の名前が書かれているそうだ。


 そんな特注を引き受けている墓石屋さんを尋ねてみると、あるわあるわ「これが墓石か!?」と言うモノがズラリとあった。製作途中の工作場にはスタンダードな長方形の墓石に混じりドラエモン、ピカチューからバカボンのパパ等のキャラクター墓石がズシリと並べられている。ひょうきんな表情ながら、石特有のヌメリとした質感が妙だ。「客寄せ用ですか?」と聞くと、「試作品もありますが、ちゃんとオーダーがありますよ」との事。マンガの大ファンだった方や、幼くして亡くなった子供が寂しがらぬ ようにと親御さんが注文されたりするそう
だ。

 また墓の前に立つと、故人の生前のメッセージが自動的に流れる墓まである。「久しぶりだなぁ、元気か? わしも相変わらずこの下で元気にやっとるよ!」とか「どうもどうも。ちょっと今まで寝てました」なんて冗談メッセージも本当にあると言う。故人を忍ぶこの時期。死してなお、お参りに来る人々を楽しませてくれるユーモア溢れる故人達に敬意を表したい。