TREASURE OF FANTOMA” EVENING SPECIAL EDITION
2003年1月 第18号  ウ530-0031 大阪市北区菅栄町3-5 ファントマ編集部




俺の以蔵 格好い以蔵

 久しぶりのトップだ。だが、いきなり最低のタイトルだぜ。いかすぞ。いつも欄外か小欄に甘んじてる俺が、はやる気持ちを抑えながら震える手で書くぜ。

 ついに! いつか必ずと思っていた幕末モノを演る。男なら誰しも憧れる激動の時代だ。新撰組の土方歳三、近藤勇、沖田総司。そして、土佐の坂本竜馬。竜馬さーん!! その他にも高杉晋作、桂小五郎、勝海舟先生などなど。やっぱ竜馬さーん! 全身ハイテクメカのようなあんたが大好きだったぜぇ! ヒョーッ!!

 次の舞台には昔、教科書で習った歴史上の人物がわんさと登場する。まるでレナウン娘のようだ。どいつもこいつもスゲえ奴らばかり。そこで俺の獲物となるのが・・・土佐の人斬り、岡田以蔵だァ! こいつは凄いぜ。マジかよ? ヒョーッ、なにしろ以蔵だァ! いや、ちょっと待って・・・岡田以蔵? 誰それ? わかんない。そんな奴知らない。ほんとに幕末の人? 俺は歴史に興味がないからさっぱりわかんない。まあいいや。俺がやるからにはきっとキュートでクレバーでナイーブなナイスガイなんだろう。実は竜馬なんかよりもすっごい大物で、いぶし銀の知る人ぞ知るの主人公なんだな。うん。

 容姿端麗、頭脳明晰、非の打ち所のない人物に違いない。普段は目立たず、家の縁側なんかで静かに空を見ていたりして。なんか長めのキセルふかして、武器は簪(かんざし)だったりして。そうそう。髪型は散切りではなく、ちょっと個性的に前で括ったりする。服は女物の着物。お洒落。勿論、女には優しくて、それでいて女好きで。パタリロのバンコランのイメージ。ヒョーッ。カッコイイ! 

 違う。どれも違うよ・・・
なんだ、こいつ? 筋骨隆々、傍若無人。ずんぐりした体格のごつい顔。頭はよくなくて、盲目的に土佐勤王党の邪魔者を斬って斬って斬りまくる狂犬だと!? だから付いたあだ名が「人斬り以蔵」? ヒョーッ・・・って、いいかこれ? なんかピンとこないな。まあそのうち分かるからいいか。

 おいおい、いきなりスタートダッシュから転んじまったが、大丈夫かよ俺? でも心配すんなよ以蔵さん。俺はきっとあんたを好きになる。いつだってそうだ。役になってくりゃこっちのもんだ。あんたのいい部分も悪い部分も何もかもだ。俺はあんたに惹かれてる。特にあんたの影の部分に惹かれてる。あんたはきっとコンプレックスのかたまりで、それでいて孤独だったんだと俺は思う。何となく似てるんじゃないのかな? 俺達。とにかく教科書にも載ってなかったあんたを俺は誰よりも熱く演じてみせるぜ。見てな、「人斬り以蔵」。俺があんたを必ずキュートでクレバーでナイーブなナイスガイにしてやるぜ!! うお〜! ガオーッッッ!!






制作無駄話●
幕末ってハードボイルドですよね。ファントマにはもってこいです。この時代の男達をファントマにあてはめると…。伊藤えん蔵:蛤御門の変で馬上より百人斬り。浅野彰一郎:脱潘後、黒船に乗り渡米。初のブラジル移民となる。盛井雅衛門:投獄され餓死。これもまたありえる伝説なり。






伊勢戦国時代村からの生還 
伊勢うどん死闘編 

伊勢フィクションノンライター 伊藤えん魔

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男女ノ淫微ナル芝居ヲシテ、ヨヒ気ニナッタ美津乃。身分ワキマヘズ舞踏会ヲモヨホス「参加ハ自由。タダ我ノゴトク化粧ヲ濃クシ、マンボニテ踊リテクダサヒ」アリ得ヌ戯レ言ト誰モガ捨テオクト憶スルモ、反ジテ盛況ナリ。婦女子ミナ濃ヒスギル化粧施シテ、マンボヲ艶ヤカニ踊リテミセル。ソレヲ見テ美津乃「マサカ本気デヤルトハ思ハナンダ。コヤツラ特大ノバカダワ」ト大ヒニ笑ヒ転ゲタ。最低ノ女ナリ。
劇団伊勢ニオヨビ名景タドル。えん魔スナワチ「誰カ我身ヲオブリテ観光ニ臨ム愚ハセヌノカ」ト問フ。皆ワラヒテ後、「ナラバ僕ガヨロシイデショウ」ト盛井冗談ヲイフ。えん魔ニコトモセズ「ナラバソウスル」ト言ヒテ体重ヲ盛井ノ背ニ乗セタ。





制作無駄話●
今回は私の大好きな「幕末」モノ。ここぞとばかりに本を読みあさっています。知れば知るほどカッコイイ男達のオンパレード! 私の好みはクールで知的な高杉晋作とワイルドな坂本竜馬。現代ならジャニーズ事務所の対抗勢力間違いなし。歌う土佐藩。踊り狂う長州藩。あぁ、最高。





二束三文男優 裏方こぼれ話

「U-22 極寒レポート」 斉藤 潤

 BRAINDICK『U-22』。あの素晴らしい芝居で、皆さんから見えない所である戦いが行われていました。
 今回の僕の仕事は舞台装置の転換スタッフです。本番初日、転換の練習を終え、本番で使う道具のチェックも終わりました。僕は「さぁ、本番だ!」と張り切りながら舞台の袖に向かいました。
「扇町ミュージアムスクエアの後ろ袖は狭いんだなぁ。これは本番中に通 らない方が良いな。芝居の邪魔になるので本番前にスタンバイしておこう」と思い本番前から一人スタンバイしました。それが全ての始まりでした。

 あの芝居は、えん魔さんとシャトナーさんが二人で全てやってしまうので、僕の出来る事は少なく、転換の出番は1シーンだけです。お二人の芝居をこんな近くで見れるなんて幸せだな、等と思いつつ僕は舞台袖の暗闇の中で息を殺していました。
 すると、どこからか冷たい風が流れてきたのです。僕は強力な悪寒を感じました。まさか、心霊現象でしょうか? 予感は外れました。只のエアコンの風だったのです。でも、その冷気は尋常ではありません。非常事態です! 「こ、ここは本当に劇場か?」と思えるほどの寒気! いくら二人の芝居パワーとお客様の熱気を抑えるためだとは言え、一瞬「このままでは死ぬ 」と考えました。死んでは死んでしまうかもしれません、僕は死なないため、死の打開策を必死で考えました。(しつこい)

 まず『激しく運動する案』。しかし、大きな物音がして芝居が中断したら大変です。ならば『暖かい物を補充する案』では? 駄 目です。舞台袖から出るには後ろを通らなければなりません。ならば『人と添い寝する案』はどうだ? 駄 目だ・・・どう見てもここには僕しかいない。最後に出たのが、純粋に体をこする作業でした。
 御覧になった方は気づかれましたか? 実はあの素晴らしい舞台裏で、超どアホが一人『寒風摩擦』を泣きながら行っていたのです。あの時、『寒風摩擦』男は思いました。
「今後、転換スタッフをする際は冬支度をしよう」
 
 余談です。その日、帰宅して風呂に入ろうとした時、風呂になどとても入れないほど体が赤く腫れ上がり、いたる所で皮がめくれていたそうです。

「禁断の6to9」  西川昌吾

 事件は起こった。現場はシーン1からシーン2への暗転中だった。先輩のS氏とJ君がベッドを、私がパテーションを移動させる手筈だった。音もなく気配を消して完全に行わなければならない。任務を遂行した私は舞台から急いで逃げた。ふと振り返ったその時、先の両名は、なんと逃げ遅れていた。舞台には照明がついている。「二人芝居に誰だお前ら?」状態である。両名はベッドメイキングの最中だったのだろう。だが時すでに遅し。時間は過ぎる。二人は止まったまま。仕方なくベッドの上に寄り添い目立たぬ ようじっとしている。心なしか手をつないでいるようにも見える。きっと厳しい現実を忘れられるよう、この幸せが去らぬ よう。ただじっと。あぁ、二人は男。禁じられた愛に燃える転換スタッフだもの。お箸の国の人だもの。(意味不明)






制作無駄話●
「U−22」、「6to9」共、受付は全てファントマの役者で豪華に固めてみました。特に「6to9」では美津乃流こだわり指令で、黒でまとめたシックな装いに。さすがに役者! 制作顔負けの物腰のやわらかい演技…いや、対応でした。そんな豪華な顔ぶれにまじってチンピラ風の輩が多少いたりしました。





   6to9   from 美津乃あわ

いやはや、とうとうやってしまったのよ。
浅野彰一・美津乃あわ 二人芝居
『6to9-six to nine-』

私の初のプロデュース、初の作・演出、初の二人芝居。ほ〜んと楽しかったわ〜あ。何しろ言いたい放題、やりたい放題の『美津乃あわパラダイス』!
でもね、その裏には語るも涙、聞くも涙、魚の目にも涙のお話がたっくさん埋もれているのよ。パラダイスのアンダーシャドウね。(何それ?)

今回の『6to9』という作品、御想像の通り『エロティシズム』をテーマにした内容。好きなジャンルではあるけんども、知らない未知の世界が山積。
で、台本を進めるためのイマジネーションが欲しくて、大量の官能映画とビデオを見たのよ。例えば、どんな物かというと、有名なところでは
「エマニュエル夫人」「チャタレイ夫人の恋人」「エーゲ海に捧ぐ」「幸せの黄色いハンカチ」等々、あーこりゃこりゃ。(「幸せの・・・」は官能映画としては駄 作だったが大感動の名作。見たら悪いか) 正統派では「アイズワイドシャット」「髪結いの亭主」「ピアノレッスン」「サウンドオブミュージック」etc。
(「サウンド・・・」も官能映画としては駄作。だがこれまた大感動の名作。悪いのか)

 
さらにはB級官能映画も数知れず。人間、飽きるほど官能映画を見ると、ちょっと脳みそマヒするみたい。一体どこまで舞台に乗せていいものか判断が付かなくなってきちゃったのね。で、私が「こんな事しよう、あんな事しよう。ぐへへ」と浅野に提案したら、ほぼ97%却下されまひた。がっかり残念。エロビデオをレンタルするのも、初めは
「ベイブ都会へ行く」「二〇三高地」の間に挟んで借りていたのに、仕舞いにゃ日活ロマンシリーズだろうと堂々とレジに持っていく始末。私の中で何かが壊れている感じ。シャッ! シャッシャッ!(壊れている感じ) だけど気にしない。

そんな脚本家の苦労と別に今度は役者としてのアンダーシャドウもやってきた。(何それ?) 実を言うと私ってば、劇団内でも一番と言っても良いほどの嫌煙家。イメージからか、「ロックグラス片手に洋モクプッカ〜」と思われがちだけど、死ぬほど嫌煙家。タバコ吸ってる人は煙ごと掃除機で吸い取るのが趣味。

しかし! この度、ど〜うしても私がタバコを吸うシーンが欲しくなって、断腸の思いで清水の舞台からパラシュート背負って飛び降りて地上で三回まわってホーと言うほどの決断で喫煙にチャレンジ。人には「舞台のためなら肺ガンをも厭わないお見事女優魂」と言われたの。一人で肺ガンになるのは淋しいので浅野(禁煙歴三年)も道連れにし、自らタバコに手が伸びるようになるまでに成長した。すると周りから「公演終わっても絶対やめられませんよ〜」と冷ややかな言葉。そう言や最近、食後の一服がやけにおいしい・・・。いや、絶対やめますとも。次の公演にはきれいな肺でのぞんでやるとも。

っと、まあジャブなアンダーシャドウだけを紹介しましたが、テーマがテーマだけに、一言では語り尽くせないアンダーシャドウや、ここでは語りにくいアンダーシャドウがまだまだ数々起こった公演でした。あー、もっとあんな事やこんな事も暴露したいなあ〜。私ってイジワル? ね、浅野君。

おしまい (アンダーシャドウって何なん?)






制作無駄話●
いつもなら演出家としてみんなに激を飛ばしているえん魔さんですが、「U−22」ではちと違いました。汗だくになりながら役者としてお稽古に打ち込むえん魔さん。公演終了後にはなんとも清々しい顔で「ありがとう」とひとりひとりにお礼を言うえん魔さん。この秋一番の感動です。





幕末女人列伝

 幕末、チャンバラ、新撰組! 刀だ! 着物だ! 立ち廻りだぁ! ジュラルミン刀を振り回しての大立ち廻り! 幕末は男の時代。自分の思想を貫く男達が生きた時代。勿論、刀も男が持つもの。ならば、幕末動乱の時代を駆け抜けて行った男達を影で支えたはずの「女」。いっちょ、その女を調べてみるか。

お龍 
坂本龍馬の妻。あの有名な寺田屋騒動で龍馬を討手から逃がし、「此の養女が居たればこそ、龍馬の命は助かりたり」と言わせた程の豪傑女。行動力のある勇ましい女性。憧れるわぁ・・・・

おさわ 
近藤勇の妾。昔馴染みであったが十年ぶりに再会して恋に落ちた。近藤勇が処刑された直後、「武士の妻」として自害した。勇の生き方にすごく共感し、ずっと応援していた人。ちょっと無理だわぁ・

お蓮 
清河八郎の妻。倒幕派の清河を憎む奉行所に捕らえられ、地獄の責め苦にあったあげく獄中で病死。毒殺されたとの説も。清河の為だけに生きて死んだ女。清川自身も暗殺される。こんな健気な人につくされたら例え殺されても幸せもんよね。

おうの 
高杉晋作の妾。若くして無念のうちに病死した高杉の墓所を守る女として三味線を教えながら生涯を暮らした。「三千世界の烏を殺し、ぬ しと朝寝がしてみたい」と晋作がうたった程に明るい性格、歌好きの人。さぞや楽しい生活だったのね。

 他にも志士の数だけドラマがあります。多くの女が、まさか自分が後世に語り継がれる偉人の女として名を上げられるとは夢にも思ってなかっただろうなぁ。
 というわけで、私も刀は持たなくとも、愛を心に幕末の時代をかけぬ けてみたいもの
です。
    






制作無駄話●
12月に下北沢スズナリ公演を控えている「6to9」。これからご覧になる方もいるのであまり多くは語れませんが、スゴイです。冒頭シーンを見なければ価値も半減します。絶対に遅刻は許されません! 至近距離でやられるとたまりません! 男と女ではどうも視点が違うようですが、エロスって美しいと思いました。所詮世の中男と女です。