TREASURE OF FANTOMAEVENING SPECIAL EDITION
2005年7月 号外  ・530-0031 大阪市北区菅栄町3-5 ファントマ編集部


 えん魔版曽根崎心中
捏造浄瑠璃作家:伊藤閻魔衛門 


「この世の名残り、夜も名残り。死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜。
 一足づつに消えて行く、夢の夢こそ哀れなれ」


 心中決行の日、人も寝静まった夜更けに天満屋を抜け出したお初は徳兵衛と曽根崎の森にたどりつき、仲良く一本の相生になった木の下を死に場所と決め、徳兵衛はまずお初を刺し、続けて自分の喉を刺す。

 曽根崎心中は元禄十六(1703)年四月七日、実際に起きた事件だ。大坂内本町の醤油問屋平野屋の手代徳兵衛が、天満屋の芸子お初と梅田堤で心中したって話だ。惚れあってた二人が死を選んだ理由は簡単。徳兵衛は江戸へ転勤、お初は田舎に身請け。東西引き別れを悲しんでの心中だったらしい。この事件を近松門左衛門が浄瑠璃に描いて大当りする。結果、実際に心中が大流行し、享保八年には心中ものの出版上演が禁じられるに至ったというから、男と女の色恋沙汰は不可解きわまりない。個人の自由がままならぬ悲劇的な時代背景もあったろうが、やっぱ「死ぬこたぁないだろ?」と思う。

 一つ、俺なりに解釈してみよう。なぜ心中しかなかったんだ? 連中の精神が脆弱すぎたからか。死を選んだ理由はなんだ? 場合によっちゃ俺が死なずに済ませてやる事ができるかもしれない。そうだ。俺ならできる。ロミオとジュリエットだって、秘密の計画を伝える婆さんがヨボヨボじゃなく、屈強頑健だったら悲劇は起こらなかった。100メートルを常時5秒で疾走。迫る敵を恐るべき破壊拳と無数の人工知能殺戮兵器『センティネス』(マトリックスにもの凄い数で登場)で殲滅すればハッピーエンドだ。

 事件の起こったのが元禄十六年四月七日。浄瑠璃初演が同年五月。つまり翌月には浄瑠璃が演じられていた訳だな。当時、舞台がいかにワイドショー的要素が強かったかがわかる。実際の事件を、実名の登場人物で脚色してたのか。そりゃ超リアルなはずだ。人権もくそもねぇ。と、思ったら身分の高い人物の事件の場合は似た名前でごまかしてたようだ。なるほどな。

 曽根崎心中、原作を読む。近松の描いたお初と徳兵衛。
 ・・・残念ながらやっぱ同情できる話じゃねぇや。俺がしてやれる事はたった一つ。二人を肝の座ったいい女といい男にする事。そんな連中でさえ死を選ばなきゃならなかった理由をつくる事。これしかできねぇ。二人で手を繋いで逝ってもう300年。何度も何度も心中したお前さんらだが、って事は何度も何度も愛しあった訳だよな。死ぬ程さ。




はじまるふじまる● 制作という仕事を始めた、まだ年端もゆかない藤丸です。劇団ではいろんな解らない事が起こります。大阪「マント」の準備はすでに万全です。ところが完璧に揃えてあった筈の筆記用具が日々足りなくなってゆくのです!? そしていつしか、筆記用具は完全になくなりました。制作を始めたばかりで解らないことだらけな藤丸です。借りていった劇団員、返せ。




 美津乃あわの『心中寸前』
〜あわひゃんの実録恋バナ 男と女の悲劇特選〜

●某有名水族館のオープン当初。立て続けに五回行った。だが相手は全て違う男だった。各男に初めて来たフリをするのが大変だった。魚を食べるのがしばらくイヤになった。悲しひ。

●旦那と舞台で共演中、昔の男が観に来ていた。しかも同じ日に二人。彼らは互いを知らず。わらひだけがわかった。悲しひ。

●男に車で迎えに来てもらったので「こっちこっち」と手を振って車の前に躍り出たらひかれた。悲しひ。

●男と一緒にぐっすり寝ていたら、横で金縛りにあっていた。そのままそっとしておいた。きもひ。

●プールでデート中つかみ合いのケンカになり、私の振り上げた拳が相手の顔面にクリティカルヒット。途端、鼻血がしたたり、蒼いプールは紅い血の海に。プールなのに海に。あおひ。

●電話で父親に間違えられた。相手の男は長い付合いなのに。悲しひ。

●初めてのデート中、手を繋いだらしばらく手に犬のにおいがこびりついていた。次の日別れた。にほひ。

●わらひの携帯に『俺の自慢』というタイトルで生ち○この写真が送られて来た。でも『自慢』には思えなかった。そんなわらひが悲しひ。

●ある日、気分よくちらし寿司を料理。年下男の前で『すし太郎』の歌を「ち〜らし〜♪」と歌っていたら「そんな歌フルコーラスで歌えるなんて年代を感じる」と、しみじみ言われた。ちらひ。

●インテリ男の車の助手席で、カーラジオにあわせてBOOMの『島唄』をモノマネ入りで絶唱していたら、
「○○ちゃん(わらひの本名)、うるさい」と顔色一つ変えず冷静に言われた。でーごーの花が悲しひ。

●チュ−をしていて、薄目をあけたら相手と目が合ってしまい、なぜか突き飛ばされて本棚で頭を強打した。いたひ。





 近松門左衛門ハードボイルド 『えん魔版曽根崎心中』

 五月七日(土)午前十時より 劇団特別先行WEB予約開始
 PC http://www.fantoma.info   携帯 http://www.fantoma.info/mobile
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はじまるふじまる● 最近、バイクに乗り始めました。400ccの黒い奴です。とてもかっこいいアメリカンのぴかぴかバイクです。同じバイク乗りの内田さん曰く「知り合いで新車買ってわずか800mで廃車にした奴がいますよ」 自転車しか乗れない潤さん曰く「背伸びしすぎ」 えん魔さん曰く「お前を見るのもこれで最後だな。あばよ」 ・・・みんな轢き殺してやる。