サイボーグ侍 誕生秘話
伊藤えん魔(ファンタジー芸人)  


 今回は昔の話をしようか。この秋にやる「サイボーグ侍」は十年も前に書いた話だ。当時、俺は普通なら出会う筈のない「何か」と「何か」を組み合わせて物語を作る手法にはまっていた。ある部分オリジナリティはあったが、ある意味色物として馬鹿にされた。インチキハードボイルド路線はその頃からこだわっていたので基本題材はむさ苦しく、冠にのせるサブタイトルは突飛なものばかり。俺の暴走演劇時代を支えてくれた愛すべき作品達。恥を忍びつつ紹介するぜ。

『超能力やくざ』
 ストレートな極道映画にSFを持ち込んでみた。当時、『代紋TAKE2』って似たコンセプトの漫画(やくざがタイムスリップする)がヒットしていたが、俺のはサイコキネシスにテレポーテーションまで何でもありだったんでド派手な演出ができた。そう言や映画化の話まで来てたっけ。一昨年前に大阪だけで再演を果たす。東京にも持っていきてぇなぁ。

『エイリアン自衛隊』
 未上演。異宇宙生物に卵を産みつけられた兵士の孤独な戦争。俺はかなりいけると思ってんだが、まわりから「例のタコの足みたいなのはどうするんですか?」「内蔵から飛び出してくる時は誰か犠牲に?」他、特殊効果問題で留保。

『吸血女子大生』
 なんとなく思いついたキャンパスホラー。銀の拳銃持ってるクラスメートやら、院の研究室で生まれた狼男やらもう無茶苦茶だったな。おかしいか? はははは。笑うな! 実際に上演する。

『ぬいぐるみマフィア』
 麻薬ギャングの青春と破滅。ギャングの回想シーンをネズミや害虫の着ぐるみで表現。俺はゴキブリで大人気。
『女殺し屋とお花屋さん』
 大好きなベッソン監督のニキータからインスパイアされてたった2日で描いた台本。殺し屋より、実は二重人格の花屋の兄ちゃんの方が恐かったって奇妙なストーリー。オレンジルーム(現HEP HALL)が立ち見で満席。すげぇ。

『サイボーグ侍』
 武士が近代メカだったらすげぇな、と思ってやっちまった。当時はチラシの段階で大笑いされた。だが、できあがった世界は胸を張れる本格戦国絵巻さ。仕方あるまい、俺はSF漫画と時代劇漫画の超ファンだぁ! 『コブラ』『Xメン』『アップルシード』。さらに! 『子連れ狼』『半蔵の門』『佐武と市』に涙した高校生だぜ。仕方ねぇだろ? やっぱ今回も笑われんだろうな。笑わば笑え。こっちは本気だ。刀はチタン合金、チョンマゲだって発光ダイオードにしてやるぜ!!(意味不明)